【おすすめ本】変な家──家の間取りには意味がある
本記事では、『変な家』(著者・雨穴)をおすすめします。
本記事の内容
- 不気味な間取り
- 怖いもの見たさ
- 落ちていく筆遣い
不気味な間取り
家の間取り図は見ていてあきない。
わたしは間取り図を手にすると、真っ先に玄関と洗面所の位置を確認する。外から帰ったらいの一番に汚れを洗い落としたいからだ。
窓の位置や大きさ、部屋の配置も重要だ。それによって風のとおりが変わるからだ。窓や扉を開け放したときに、部屋のなかに新鮮な空気がふわりと入ってくる家がいい。
間取り図を指でなぞりながらふだんの生活動線をイメージし、気持ちよく過ごせる部屋かどうかを確認する。引っ越しの予定もないのに。
「もしこの家に住むことになったら」と仮定して、あれこれ想像してみるのが楽しいのだ。一人妄想劇場の開幕である。
では、間取り図に「謎の空間」を見つけてしまったらどうだろう。
妄想だけなら気にも留めないかもしれない。しかし引っ越しや購入を検討しているならそうはいかない。人は合理的な理由のつかないことには不安を覚えるものだ。
本書の舞台となっている「変な家」の台所には謎の空間が存在する。台所の一角に二枚の壁を足して作ってある小さな四角い空間。出入り口はない。閉ざされた空間なので日常生活で使うことはできないが、台所が少々手狭になる程度で支障はなさそうだ。
(いったいなんのためのスペースなんだろう。)
収納棚でも作ろうとしたが、予算の関係で断念したと考えられなくもない。
本書の主人公、オカルト専門フリーライターの「筆者」は、知人からこの家の間取りを見せられて大手建築事務所の設計士「栗原さん」に相談する。
栗原さんは「その空間は意図的に作られたものだ」という。意図的にということは、なにかの目的があってわざとそこに作ったということだ。四方を壁に囲われた出入り口のない小さな空間を。
寝ころびながらぼんやりと妄想にふけっていたが、雲行きがあやしくなってきたのを感じ、起きあがってまじまじと間取り図を見つめた。
(いったいだれが、どんな思惑でこの謎の空間を作ったのか……。)
怖いもの見たさ
さらに、この「変な家」の二階には奇妙な子供部屋がある。
二階部分には合計9か所も窓があり、外観は明るく開放的なイメージなのだが、それとは対照的に二階の中央に作られた子供部屋には窓がない。
それだけでなく子供部屋のドアは二重扉になっていて、見方によっては、窓の外から子供部屋(あるいは子供)の存在がわからないように設計されているように思えてくる。
勝手に空想をふくらませると、たとえば重い皮膚病を患っている子供のための部屋という可能性が考えられる。だがその理由では二重扉の理由が説明できない。
「筆者」はふとした思いつきで一階と二階の二枚の間取り図を重ねてみた。するとそこに奇妙な重なりを発見した。
家を平面的にとらえていたときにはあやふやで存在感のなかったものが、家全体を立体的にとらえた瞬間に「謎の空間」と「窓のない子供部屋」が「機能的な空間」として正体を現した。
なぜ台所の一角に小さな空間を作らなければならなかったのか。なぜ子供部屋は外部から目隠しされる必要があったのか。納得のいく理由を探そうとするほど人間の闇に迫っていくようで目が離せなかった。
落ちていく筆遣い
わたしはホラーの類がきらいだ。苦手なのだ。作り物とわかっていても「恐怖」にたえられない。物の怪や妖怪が登場する物語はだいすきなのだが、人間の狂気や心の闇に迫るようなものはたえがたい。
本書の出版前から人気となっていたYouTube動画には「【不動産ミステリー】変な家」というタイトルがつけられているが、ミステリーというよりほとんどホラーじゃないかと思う。著者情報にも「インターネットを中心に活動するホラー作家」と書いてある。
読みはじめてすぐにホラー小説であることに気づいて後悔した。最後まで読んでしまったのは、読みやすさとテンポの良いストーリー展開が原因だろう。逃げたい気持ちと怖いもの見たさがないまぜになってぐいぐいと作品世界に落とされていった。
それでもやはり一気には読めなかった。読みやすい筆致なので一晩で読了も可能だろうが、わたしは一章ずつ読むのがやっとだった。
仕事が終わって寝支度をしてから深夜の時間帯に読み進めたのだが、背中がぞわりとするたびに何度もうしろをふり返った。本書を読んだ晩は、背中がぞくぞくして布団にくるまって眠りについた。
読み終わったいまでも思い出すと背筋に冷たいものがつたう。しかしまた読み返したくなっているのは、恐怖のなかにも物語としてのおもしろさがあるからだ。
わたしはきっともう間取り図をふつうには見られない。
さいごに
『変な家』(著者・雨穴)をアマゾンで見つけたのは偶然だった。
もともとYouTubeでネット小説として作品公開し、人気が出たようだが、最近まで知らなかった。
本好きとしては、動画より書籍のほうがいい。あまり味わいたくないが、「恐怖」は動画より紙面からのほうがひしひしと感じるからだ。
「変な家」の間取りの謎を解く覚悟ができたなら、購入は下のリンクからどうぞ。