怒りMAXのお客様から教わったこと【コールセンター・言葉編】
まえがき
毎日実験して、失敗して、叱られて、泣いて、そしてまたチャレンジして。私の仕事はそんな日々の繰り返し。
あーでもないこーでもないと自分でやってみるから、気づきがあって成長がある。
怒髪天を衝かんばかりのお客様から教わったことを綴ってゆく。
目次
- 怒りMAXでお客様が叫んだ言葉
- お客様はわがまま?
- 幸せと安心を与える言葉使いになれ
怒りMAXでお客様が叫んだ言葉
カスタマーサポートの仕事で大切なのは『共感』だ。なにをおいても『共感』だ。これをやらねばはじまらぬ。
ほんとうに大事なので、本論ではないけれど、実践を通じて発掘した「『共感』のコミュニケーション」のポイントを再掲しておく。
- 事の次第を「説明」する
- お客様の「心情」を言葉にする
- 心配や迷惑をかけたことに「謝意」を表明する
上記ポイントを押さえた結果、お客様から届くアンケートの高評価が増えたので、大枠は間違っていないと思う。
でも、あらためて見直してみて、1の「説明」という言葉はちょっと違うと思ったので、若干の手直しを加えたい。
最初の段階で行うのは「リキャップ」。お客様に納得のいく「説明」をするのは、その次のステップになる。
リキャップの目的は、お客様の要望や主張を正しく理解したかどうかの「確認」にある。だから1は「説明」ではなく「確認」と書くのが適切だった。
次の段階以降で「説明」「解決」「提案」「説得」などが出てくる。
単純な質問に答えるだけで済めば、まさに夢のようなひと時となる。
お客様の勘違いを正そうとしてあれやこれや説明をする時、うっかりお客様の矜持を踏み抜くと地獄のふたが開く。
ホテルと交渉する時には、あちらにもプライドがあるので機嫌を損ねないようにめっちゃ気をつかう。でも言いにくいことを言う時には、急にカタコト英語になってズバズバと言ったりする。
インセンティブ欲しさになんとかしてお客様に満足を感じてもらおうと、私たちはいつも必死だ。(知らんけど。)
でも、なんでもかんでも叶えてあげられるわけではないので、代替案を提案したり、時にはサポートの限界があることを説得し、理解してもらわないといけないこともある。
サポートの限界は、残念ながら、ある。
お客様の主義主張や希望がすべて100%まるっと通る世界なら、こんなに簡単なことはないけれど、世のなかそんなに甘くない。
客「旅行に行けなくなったんで、全額返金してほしいんスけど。」
私「恐れ入りますが、こちら返金不可のポリシーをご選択いただいておりますので、ご返金は……」
客「ポリシーとか知らんし。なんで泊まってもないのに、金払わんとあかんねん。とにかく全額返金せえ!」
(えー……。)
こんな会話は日常茶飯事。
利用していないサービスにびた一文払いたくない気持ちはよーーーく分かる。
でもね。世のなかには規約ってもんがあるんだわ。どんなポリシーを選択するかはお客様側に選択権がある。あなたが自分で選んだのよ。
なかには「ポリシーなんか読むわけないやろ!」と恥ずかしげもなくトンデモ発言をされるお客様もいらっしゃる。冗談はあなたのタメ口だけにしてほしい。
私「ホテルにご事情を説明させていただき、キャンセル料金の免除に同意してもらえるかどうかを確認いたします。」
客「いまから用事あるから、2時半頃に折り返し電話してきて。」
私「大変申し訳ありませんが、時間を指定してお電話することはできかねまして……」
コールセンターなので、基本的には入電専用。ご希望の時間にこちらから電話をかけるようなコンシェルジュ・サービスはやっていない。
お客様のイライラが最高潮に高まりつつあるのは電話口の向こうからヒシヒシと伝わってくる。でも、できないものはできない。
嘘をつけない性分なので、言われたことに嘘いつわりなく正直に返答すると、怒りのボルテージが最高潮に達したお客様が最後に叫んだ。
「『できない、できない』ばっかりやなくて、『約束できませんが、なるべく早く対応します』って言ってよ!」
お客様はわがまま?
わがままかっ。
なんて言うと、プロフェッショナルじゃないって叱られるんだろう。
「時間は約束できませんが、なるべく早く対応いたします。」
わざわざ言わなくても、私たちはいつだってお客様のために最大限の努力をしている。だって仕事なんだもん。
なのにお客様は、時間は約束できないと言うと、そこにばかりフォーカスしてくる。「じゃあ、いつ連絡くれるの?」
だーかーらー!
いつ連絡できるか分からないって言ってるじゃないですかぁ。ホテルから回答があり次第、連絡しますよぉ。
堂々巡りのお客様を前に、いつも私は心のなかでこう思っていた。
(もう、いいかげんにしてくれ。)
ごめんなさい。カスタマーサポートとして最低だ。
「『できない、できない』ばっかりやなくて、『約束できませんが、なるべく早く対応します』って言ってよ!」
お客様にこう言われてハッとした。
そうか、同じことを言うのでも、お客様は私たちにかけてもらいたい言葉があるのか。
どんな言い方をしようが、できないことはできない。会社のルールやサービスのルールは、担当者の一存では変えられない。勝手なことをやると私たちの首が飛ぶ。
でも言い方は自由に変えられる。
「約束できません」ではなく、「約束はできませんが、できるかぎり早く対応させていただきます」と言うだけで、お客様は安心し喜んでくれるというのだ。
こんな簡単なことがあるだろうか。
お金もかからないし、だれにでもできる。嘘も言っていない。お客様に感謝されて、私たちもうれしい。
言葉は使い方次第で「安心」を与えることもできれば、人を喜ばせることもできる。
私たちの仕事は、電話越しの「声」の仕事。それは「言葉」でだれかを幸せにできる仕事。
その数、対応件数が1日平均30件とすると、1週間で150件。1年間で7,800件。
すごい数だ。
毎年7,800人もの人に、あたたかい言葉を贈り、言葉で喜ばせ、言葉で安心を与え、言葉で慰める仕事をやっていることになる。
すごい仕事をやっているんだなと思うと、武者震いがした。
幸せと安心を与える言葉使いになれ
たかがコールセンターの仕事で、大げさな。そんな風に思う人もいるだろう。
あんた鬼ですかと言いたくなるお客様には、あなたの言葉なんて届かないでしょ。そう思う人もいるだろう。
まあ、そうなんだけれども、でもね、仕事の価値は自分が決めていいんだって!
自分はすごい仕事をやってるって思えたなら、かならずあなたの態度が変わる。言葉が変わる。そうしたら最後にお客様が変わる。
どうせ仕事するなら、なんか新しい技でも身につけてやめてやるって思うやん。
がんばるって決めたんなら、自分ががんばれるマインドセットをするほうがええやん。
カスタマーサポートの仕事では、コミュニケーション力が磨かれる。揉みに揉まれていやがおうでも磨かれる。
共感の伝え方が上手になって、相手から感謝の気持ちが返ってくる。
言葉の選び方が上手になって、相手から信頼の気持ちが返ってくる。
どう転んだって自分にとってのギフトになる。
幸せと安心を与える言葉使いになろう。「言葉使い」っていうのは、魔法使いとか猛獣使いって言う時の「言葉使い」ね。なんか格好いいやん。
最後に、昔、本で読んで気に入っている言葉をみんなに贈る。他人の受け売りだけど。
言葉を上手に使う人は、自分の考えを削っては磨き、きちんと整った形で表すことができる。
うまく考えがまとまれば、適切なプランが立てられる。
プランが適切であれば、ものごとは順調に進む。
ものごとが順調に進んでいけば、達成できないことなどほとんどない。
「言葉使い」になったら、仕事も人生もうまくいく。
あとがき
お客様に叱られて以来、話す順序や枕ことば、言葉の選択のしかた、表現のしかた、間の取り方、声のトーン、話すスピードなど、自分の話し方をあらゆる側面から見直し、改善し、実践してきた。
幸せと安心を与える言葉使いになろう。そう自分で決めたから。
できないこともいっぱいある。組織人として嘘は言えないので、正直に話す。お客様の希望を叶えてあげられなくて、私もくやしい。
それでもあきらめずに毎コール、毎コール、お客様にどうしたら幸せと安心と喜びをあげられるだろうかと唸りながら対応している。
そうしたらある時、こんなアンケート結果が返ってきた。
「望んだ結果ではなかったけれど、対応が誠実でした。」
お客様の金銭的負担を会社として補填できなかったケースだったが、お客様は自分のくやしい気持ちをグッと押しこめて最高評価をマークしてくれていた。
仕事の価値を自分で決めたら、お客様への態度が変わる。かける言葉が変わる。そうしたら最後にお客様が変わる。
幸せと安心を与える言葉使いに私はなる。
参考記事
「コールセンターの仕事がつらい」から脱却する「共感」のコミュニケーション【マレーシア】
コールセンター関連の記事
「好き!」からはじめる笑顔の接客【マレーシア・コールセンター】
鏡に映った顔を磨いても汚れは落ちない【コールセンター談】
ディズニーが足元にも及ばない職業【コールセンター・仕事の価値編】