「好き!」からはじめる笑顔の接客【マレーシア・コールセンター】
まえがき
最高のカスタマーサポートって、どんなだろう。
ビロードのように耳ざわりが良く、なめらかで、うららかな春の陽気を思わせる、やさしい声に包まれて昇天するのがお望みか。
それとも古き良き時代の大和撫子のように、つねに相手を立て控えめで従順、けっしてお客様の要望に「ノー」と言わないのがタイプか。
お客様は老若男女、精神年齢、性癖、性格さまざまだ。どんな方にもご満足いただくのが理想だが、「声」の接客はそう甘くない。
今日も勢いよく打ち上がりはしたものの、軌道に乗れずに太平洋のど真ん中に落っこちてきた。
目次
- 思い、思われ、ふり、ふられ
- 明るく、仲良く、喜んで働く
- ラファエルさんに学ぶ接客の極意
思い、思われ、ふり、ふられ
以前のエッセイで「共感」のコミュニケーションについて書いた。
大切なのは、まずお客様の話を「ただ聴く」こと。まかりまちがっても話の途中で口を挟んではいけない。「それについてはですねー」と得意げにしゃべりはじめるなど言語道断だ。
そんなことをするとお客様は気分を害され、信頼関係は泥状になって積み上がらなくなってしまう。初動対応を誤りこじれてしまった関係はなかなか元には戻らない。体験談より。
お客様に思いの丈をすべてぶちまけていただくまで、我々のターンはやってこないと心得よう。
話がひと段落ついて、お客様が一呼吸置かれたその時に、おもむろに口を開けばいい。
まずお客様が長々とお話になった内容を、ほんの十数秒に簡潔にまとめてリキャップし、妄想力フル回転でお客様の心情を言語化したら、ご満足いただけていないことに心からの謝意を伝える。
「共感」の正体は、コミュニケーションのスタイルだ。その極意は、言葉でいちいち丁寧に伝えることにある。なんとなく雰囲気で「そうですよね。申し訳ありません。」と同意し謝罪したところで、お客様は私たちの「共感」を受け取ってはくれない。
そのことに気づいて「共感」のコミュニケーションを現場で実践していると、お客様からの評価が変わった。電話終了後に勝手にお客様に送信される、エージェント対応のアンケートの高評価数が爆増したのだ。
これはもう正鵠を射たと言ってもいいのではないだろうか。
ところが、毎日毎コールで「共感」のコミュニケーションを実践したとしても、なかにはどうにもこうにも怒り心頭に発して手がつけられないお客様もいらっしゃる。
話を聞けば聞くほど同情の余地しかなく、現実問題としてはどうにもできないが、せめてお客様の悲しみには寄り添いたいと、そっと肩に回そうとした手をまるでハエ叩きで打ち落とすかのごとく拒絶され、フルボッコ。
お客様の心は荒れ模様。私の心は雨模様。
それでもなんとか救いになってあげたいと、長丁場を覚悟して話しに付き合う。こうなるともう電話対応時間は余裕のヨッちゃんで1時間を超える。
たとえ非難の集中砲火を浴びせられてグロッキーになったとしても、たとえ同じ話を何度も何度も繰り返し聞いて、同じことを何度も何度も繰り返し説明して、もういいかげん面倒になったとしても、「そろそろおわりにしませんか?」なんて口が裂けても言えない。
脳内バックコーラスが『夜明けのスキャット』を歌い出し、あやうくあちらの世界に逝きかけたところで、捨て台詞を吐かれてガチャ切りされた。
なんとも後味の悪いことこのうえない。
気分転換をしようとコーヒーカップに手を伸ばし、冷めたコーヒーをひとくち口に含むと、苦味が目にしみた。
明るく、仲良く、喜んで働く
世のなかには、残念ながら手に入らないものがある。自分の思い通りにならないことがある。どうしようもないことに固執すると、苦しいばかりで救いがない。
自分に対してはなんとでも言い含められるし、第三者の立場なら冷静に物事を見ることもできるだろう。しかし、お客様に世のなかの原理原則を説いたところで、火に油を注ぐだけ。百害あって一利なしだ。
こういう時、私たちにはなにができるだろう。
代替案や妥協案を提示することはできる。では、それらすべてが気に入らないと、お客様ににべもなく拒絶されたら?
気持ちが落ち着くまで話を聴くこともできる。しかし背後にはまだかまだかと首を長くしてお待ちいただいているお客様がたくさんいる。あんまり悠長にひとりのお客様にだけかまってはいられない。
では、放っておくか。放っておかれたほうの気持ちを想像するとせつないし、そもそも終話しなければ次の電話には出られない。
にっちもさっちもいかない状況にだんだん行き詰まり、イライラし、言葉数が少なくなって、最終的には私自身がふてくされる。
ごめんね 素直じゃなくて
電話のあとなら言える
思考回路はショート寸前
ほんともう くたびれた
泣きたくなるような ムーンライト
電話もできない ミッドナイト
だってシフトエンド どうしよう
ハートは涙色
なんでもっとやさしい言葉をかけてあげられなかったのかな。電話のあとで後悔することもある。でも後の祭り。
無理難題ばかり迫る困ったお客様でも、喧嘩別れのあとはさみしい。
ほかになにかしてあげられることがあったんじゃないかって、そんなことばかり考えてる。
考えてばかりじゃ、前に進めない。前に進みながら、考えよう。
救えないお客様ばかりじゃないんだ。
お客様からいただく高評価が増えたということは、救われたお客様が増えたということなんだ。そのことを素直に喜ぼう。
どんな時でも大事なことは、明るく、仲良く、喜んで働くことだ。
どんなに落ち込んでも、気を取り直し、明るく、仲良く、喜んで働くことを忘れなければ、かならず良い結果はやってくる。かならずだ。
無理にでも口角を上げて笑顔をつくろう。明るく電話に出れば、それが次のお客様の救いとなり、ブーメランのように幸せが自分のところに返ってくる。
世のなかは、そんなふうにできているんだから。
私たちにできるのは、お客様のために知恵をしぼること。仲間にアドバイスをもらうのもいいし、仲間のやり方を見てまねてもいいよね。
「詰んだ」と思ったら、思考停止になる。それではブレークスルーはやってこない。
突き詰めて考えるのも大事だけれど、自分から行き詰まるのはやめておこう。
おわったことはヒョイと軽やかにまたいで乗り越え、バイバイと手を振り、あとは明るく、仲良く、喜んで働く。それだけでいい。
ラファエルさんに学ぶ接客の極意
先日、人気YouTuberのラファエルさんとYouTube講演家の鴨頭嘉人さんの対談動画を見た。
「なぜ、ラファエルさんは、だれにでも好かれるのか?」
営業をやっていた会社員時代、ラファエルさんはひとつ上の先輩には嫌われるけれど、後輩やもっと上の先輩、上司、役員からは好かれたらしい。
そんなうらやましい能力、どうやったら手に入るのか。
直接的な解答ではないけれど、営業時代を振り返って、こんなことを言っていた。
クライアント企業の部長や課長に会いに行く時、相手のことを「本気で好き」って自分を騙すぐらいのマインドでやっていたと。「会社が好きなんじゃなくて、僕、部長が好きなんです。」
会う前からちゃんと自分をセットアップして、本物の状態をつくってから、しっかりちゃっかり相手に取り入る。
そうすると、結果的に相手からも好かれて良いことばっかりだから、ストレスにもならないんだそうだ。イヤイヤやるから楽しくないし、ストレスもたまる。
しかしだ。まだ会ったことのない人に会う時って、相手がどんな人かよく分からないから「怖いんじゃないか?」とか「否定されたらどうしよう」とか、危害を加えられやしないかとおそれを感じるのが普通じゃないだろうか。
カスタマーサポートの仕事だって、電話に出る時はやっぱり毎回緊張する。だって、いきなり怒鳴ってくるお客様もいるからね。そりゃ、身構えもするさ。
でも、だからこそ事前に自分をだましておくのが大切なんだな。怖い怖いと思いながら電話に出たら、明るく気持ちの良い挨拶はできないだろうからね。
営業とカスタマーサポートの仕事は同じではないけれど、どちらも人と人とが関わる営みである以上、多少なりとも人の感情が動く。
(まあ、カスタマーサポートの仕事では、感情が動くどころか、感情の嵐がしょっちゅう吹き荒れているけれど。)
愛想がなく覇気もない営業担当者と、自分に好意を持ってくれている熱心な営業担当者がいたら、どちらかと言えば、後者と取引したいと思うのが人情じゃないだろうか。
カスタマーサポートもきっと同じだろう。
時給のためだけに働いているような、こちらへの興味など微塵も感じられない対応よりも、明るい声で挨拶し、親身になってくれる担当者のほうが感じがいいに決まっている。
対応次第では、怒りなんてどこかに行ってしまうかもしれない。それがベストだ。
あとがき
電話対応によるカスタマーサポートでは、お客様と顔を合わせることがない。電話越しの一期一会だ。
私たちとの会話など電話がおわれば記憶の彼方に消えていくんだろうけど、その日一日を気持ち良く過ごせるような、そんな素敵なご縁にしたいと思う。
よし! 今日は今日。明日は明日。
済んだことはヒョイと軽やかに乗り越えて、明日も明るく、仲良く、喜んで働こう。
参考動画
解禁【ラファエル×鴨頭嘉人】ガチンコ対談① 〜 時給日本一YouTuberの成功の“素顔”に迫る!#コラボ講演
人に好かれる極意については「3:12」からご視聴ください。
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