「願えばかなう」はうそなのか?【願いをかなえるための極意とは】
まえがき
いっとき自己啓発系の素材にハマっていた時期がありました。「どんな自分になりたいのか」「どんなゴールを達成したいのか」と一生懸命に自分の未来を思い描いてみたのです。
自分の未来にあれこれと思いをはせている間は、気持ちがたかぶり何でも実現していけそうな気がします。それはとても気持ちのよい瞬間です。
しかし残念ながら、そんな高揚感は夏の終わりの台風のごとくわたしの胸の内をしっちゃかめっちゃかにかき乱し、そしらぬ顔してどこか遠くの海へと消えていってしまいます。あとに残るは塵ばかり。
ところが、世の中にはちゃんと自分の望みを実現している人たちがいます。起業したとか、副業で稼げるようになったので会社をやめたとか、売上が倍増したとか。ちょっと成功したどころではなく、もはや「激変」といってもいいくらいの結果を出しているようなのです。いったいどうしたらそんな成果が出せるのでしょうか。
願えばかなう?
願うだけではかなわない?
自分のやりたいことすらよくよく考えこんでみなければわからなくなっている不幸な世の中ですが、いずれはかなく消えてしまう命なら、使い切らなきゃもったいない。もったいない精神旺盛なわたしはどうしても成功の秘訣が知りたくなりました。
そうして行きついたのが、最先端の脳科学の研究に裏づけされたコーチングの世界だったのです。おかげさまで30年越しの夢を実現し、ついに海外移住を果たすことができました。
記憶の最奥に埋没し、永久に葬り去られようとしていた子どもの頃からの夢を(少々、いやかなり大変な思いはしましたが)実現できたことは、人生初の快挙と言っても過言ではないくらいの達成感があり、誇らしい気持ちになりました。
そこまではよかったのですが、あんなにあこがれた海外生活もはじめてしまえば単なる日常です。わたしはまた目の前の人生をただ生きるだけの生活に戻ってしまいました。
現状維持でも生きていけるけど、どうせなら行けるところまで行ってみたい。まだ見ぬ世界に飛びこんでみたい。そうでなければ死ぬに死ねません。そこで、成功の秘訣というものをあらためて勉強しなおしてみることにしました。
本記事は、自分のありたい姿やゴールを設定してもいつまでも同じ場所から抜け出せないのはなぜなのか、どうすれば確実に成果を出すことができるのか、についての学びを共有するために書いています。
「もういい加減、現状から抜け出したい!」と願う人にとって参考になれば幸いです。
本記事の内容
- 「願えばかなう」はうそなのか
- 願いをかなえるための極意
- 願いをかなえるうえで大切なこと
「願えばかなう」はうそなのか
お星さまに願いをかけるように心に願っただけで願いがかなえば苦労はありません。さすがにそんなメルヘンチックなことは信じていないけれど、「願えばかなう」というのは真っ赤なうそなのでしょうか。
ゴールを達成してすばらしい成果を出している人の秘密をなんとかしてあばいてやろうと本を読みあさり動画をチェックしてみると、どうやら事の真相が見えてきました。
信ずれば成り、憂えれば崩れる(信成万事)
YouTube講演家の鴨頭嘉人さんが、倫理法人会関連の動画で紹介している『万人幸福の栞17カ条』に「信ずれば成り、憂えれば崩れる(信成万事)」という教えがあります。
参考に動画リンクを貼りたかったのですが、残念ながら該当のYouTube動画を探しあてることができなかったので、動画を見たときにわたしが書きとめた内容を紹介します。
「信ずれば成り、憂えれば崩れる」
信ずるという事は、事実そうであるから、それと信ずるのではない。
そうであることは信ずるも何もない、もうすでにそうである。
ほんとうに信ずれば、そうなるのであり、必ず信じた通りにさせるのである。
ここで言わんとしていることは、たとえば将来作家になる人は、もうすでにいま作家なのだということです。実際に本を出版してなんらかの社会的な実績ができたら作家になれる、ということではなく、あなたがプライベートで本を一冊でも書けば、もうすでにあなたは作家なのであり、あとは世間から見つかるタイミングがいつ来るかというだけなのです。
つまり、社会的評価があってはじめてあなたは作家になれるのではなく、自分を作家として取り扱い、本を書きはじめた瞬間からあなたは作家なのだということです。将来作家になりたいと思うのであれば、いまこの瞬間から作家としてものを考え、作家として行動せよ、ということです。
いつかあなたは世間に見いだされ、作家として社会的評価を受ける日が来るかもしれませんが、他人に評価されようとされまいと、あなたが作家になることの必要条件ではないということなのです。
さて、あなたは何になりますか?
わたしはこうやって文章を書いてみることにしました。おそらくわたしの文章力も構成力も表現力もプロの作家さんやライターさんたちにはかなわないでしょう。これまで文章を書く訓練をしてきていないのですから当然です。それでもわたしは書くことにしました。だって「そうであることは信ずるも何もない、もうすでにそう」なのだから。
自分の評価は自分で決めればいいのです。世間の評価はあとからついてきます。
サイコサイバネティックス理論
みなさんは「サイコサイバネティックス理論」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。1960年代にアメリカの形成外科医であるマックスウェル・マルツが提唱した理論で、人間には必ず目的を達成する習性があると説いています。脳外科医の林成之先生は著書『〈勝負脳〉の鍛え方』のなかで、サイコサイバネティックス理論を応用した目的達成のための3つのステップを紹介しています。
林先生によると、人間の脳はとても柔軟に機能するのだそうです。それはまるで自由自在にベクトルを操ることができる矢琶羽の血鬼術・紅潔の矢が、朱紗丸の血鬼術である毬に付与されて変幻自在に方向を変えたように、人間の脳にもまたどんな状況下にあっても自由自在に方向を変えるボールのような柔軟さが備わっています。
だからこそ社会はつねに進歩するのであり、現状を維持するだけでは取り残されていく結果になるのです。言ってみれば、人間は坂道の下を向いて立っているようなものです。目的を達成するには、体の向きをぐるりと変えて坂道を駆けあがっていかなければなりません。脳に目的の自動達成装置が装備されているなら、ここで活用しない手はありません。
林先生がサイコサイバネティックス理論を応用し、アレンジした目的達成のためのステップとは次の3つになります。
- 目的と目標を明確にする
- 目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する
- 目的を達成するまで、その実行を中止しない
まず、目的と目標は区別して考えます。たとえば一流の野球選手になることが目的だとすると、そのために何を鍛えるかが目標になります。そして目標を達成する具体的な方法を考え実行していくのですが、目的を達成するまで決してあきらめてはいけません。
脳には自分を守る自己保存の本能があり、なかなか目的が達成できないと、あれやこれやともっともらしい理由をつけて方向転換しようとします。ここであきらめて実行を中止すると目的が達成できなかった事実だけが残ります。そしてこれが癖になると、おそろしいことに何をやっても目的達成ができない脳になってしまうのです!
努力してもなかなか結果に結びつかないと「自分には無理なんじゃないか」と不安が鎌首をもたげ、自分の無能さを眼前につきつけられたような居心地の悪い気持ちになり、現実から目を背けてしまいたくなります。実はそうした反応は脳の苦痛を避けようとする本能によるもので、自然の摂理です。わたしたちが己の心の弱さをなげく必要は一切ありません。
ですが、何をやっても目的達成できない脳になるのはごめんです。
苦痛から逃げたくなるのが脳の習性なら、こちらも脳の特性をうまく利用して自動達成装置を起動させればいいのです。林先生がサイコサイバネティックス理論をもとにアレンジした3つのステップを守ることができれば、わたしたちの脳が必ず目的達成に導いてくれます。
「Image(イメージ)×Vividness(臨場感)=Reality(現実)」
わたしが人生の暗黒期から抜け出して海外移住を実現できたのは、脳機能学者である苫米地英人博士のコーチング理論に出会ったからです。そのエッセンスは苫米地博士の多くの著書のなかで解説されています。ここでは苫米地英人博士の著書『夢をかなえる方程式』から、「Image(イメージ)×Vividness(臨場感)=Reality(現実)」の方程式を紹介します。
この方程式が示しているのは、「ゴールの世界を強くリアルに感じるとゴールの世界が現実になる」ということです。この理論ではゴールの設定がすべての鍵を握ります。条件があるのです。というのも、この理論が対象としているゴールとは、抽象度の高い世界の話だからです。詳しいことは本書を読んでいただくとして、脳の機能面について見てみましょう。
人は潜在的に複数のゲシュタルトを持つことができます。「ゲシュタルト」とは、本書では「統合的な人格」を指すと説明されています。たとえば、いまは年収500万円だけれど将来は年収1億円の自分になりたいとします。この場合、現在のゲシュタルトが「年収500万円の自分」で、ゴールの世界のゲシュタルトが「年収1億円の自分」になります。
ここでのポイントは、複数のゲシュタルトのうち表に出るのはひとつだけだという点です。「年収500万円の自分」と「年収1億円の自分」のどちらのゲシュタルトが顕在化するかというと、より臨場感が高いほうが自我に選ばれます。したがって、「年収1億円の自分」の臨場感を強くすれば、ゴールの世界のゲシュタルトが表に出てくるのです。
仮想現実と現実世界を描いたキアヌ・リーブス主演の映画『マトリックス』を思い起こしてもらえるとイメージしやすいかもしれません。
主人公のトーマス・アンダーソンが本当の意味で目覚めると、現実だと思っていた世界は実はコンピュータがつくりだす仮想現実世界であり、現実世界では人間たちが培養槽のようなカプセルのなかに閉じ込められてコンピュータに培養されているというストーリーでした。
映画のなかで登場人物モーフィアスが「What is real? How do you define real?」というセリフを言うシーンがあります。現実とは何なのでしょう。あなたは現実をどう定義しますか? 頭の後ろからプラグを挿しこみ、脳に直接情報を送りこめばそれが目の前に現実世界となって現れるように、脳にとってはどちらの世界が「Real」でもいいのです。ただ臨場感が高いほうが「Real」として認識されるというだけなのです。
苫米地博士の言うゲシュタルトの話に戻りましょう。「年収1億円の自分」に対して臨場感を高めれば、脳はそちらの世界が「Real」だと思って「年収1億円の自分」のゲシュタルトが表に出てきます。
では、ゴールの世界のゲシュタルトが優位になり表に出てくると何が起こるのでしょうか。
心理学には「認知的不協和」という心理状態があります。自分の内側の現実と外側の現実にズレが生じると、人はその矛盾を解消すべく外側の現実をマインドの内側の現実に合わせてつくり変えてしまうのです。
そのため「年収1億円の自分」の臨場感を高めていくと「年収500万円の自分」に不協和を感じ、自分の外側の現実を「年収1億円の自分」に合わせようとしてゴールの世界がおのずと実現していくことになるのです。
ようするに、現実はマインドの内側の問題だということです。
マインドの内側のリアリティを変えてしまえば外側の現実も変わっていきます。「いま現在の世界」の臨場感より「未来のゴール世界」の臨場感を高めることで、認知的不協和があなたをゴールの世界に導いてくれるのです。
成功も失敗も自己イメージ次第の自己一貫性理論
心理学博士であり臨床心理専門家であるイ・ミンギュ氏は、著書『「後回し」にしない技術 「すぐやる人」になる20の方法』で「自己一貫性原理」について書いています。
人間は自分の言葉と行動が自己イメージと合致していることをよしとするため、「わたしはこんな人間だ」とイメージすれば、実際にその自己イメージに合うように行動し、結果的にそのとおりの人間になっていくのだそうです。
創造的な人は事実そうであるから創造的なのではなく、創造的な人間だという自己イメージがあるから創造的でいられるのです。
うつ病から抜け出せないでいる人はそれが治らない病気だからなのではなく、うつ病でなくなったらうつ病患者であるという自己イメージが崩れてしまうから抜け出せないのです。
本をたくさん読みたければ、「わたしは一週間に1冊以上、本を読む人間だ」と自分を規定しましょう。
実行力のある人間になりたければ、「わたしはやると決めたら、必ずやり遂げる人間だ」と自分を規定しましょう。
アイデア豊かな人間になりたければ、「わたしは何をやっていても、ユニークなアイデアをひとつずつ思いつく人間だ」と自分を規定しましょう。
早起きできないのはあなたが怠け者だからではありません。ほかならぬあなた自身が「自分は早起きできない人間だ」と決めつけているからなのです。人は自己イメージに合うように行動します。成功も失敗も、結局のところは自己イメージ次第ということなのです。
大きなことを成し遂げたいと思うなら、自分自身をもっと大きくイメージしましょう。もしいまの自分とは違った自分になって生きていきたいと思うなら、どんな自分になりたいかを思い描き、自分はそういう人間だとイメージしさえすればいいのです。そうすれば、人間の自己一貫性原理によって自己イメージに合う方向へと導かれていきます。
ただし、新しい自己イメージをつくったら、行動することをお忘れなく。
願いをかなえるための極意
ここまでの話を総合的に考えると、「願えばかなう」というのはまるっきりうそというわけではなさそうです。ただし、どうやら「マインド」と「行動」の両輪がなければダメらしいですね。
もっとも大切なのは「マインド」です。自分をどのように規定するのか。自分を何者として取り扱うのか。どこにゴールを設定して何をめざすのか。そこが定まらなければゴール達成へのゲートは開きません。
次に大切なのは「行動」すること。何も行動せずにバラ色の未来を思い描いているだけでは現実逃避と変わりありません。前述した「自己一貫性原理」だって自己イメージに合うように導かれていくとは言っても、行動した結果、そのとおりの人間になっていくのであって、やはり行動がともなっています。
さて、成功の秘訣は「マインド」と「行動」にあり、ということがわかると、次に直面するのは実践を「続けられるかどうか」という問題です。ここが最大の難所と言っても過言ではないでしょう。頭でわかっていても、うまくいかないからみんな困るのですよね。
その難関を突破するための極意は「ルート探索」と「プロセスの視覚化」だと『「後回し」にしない技術 「すぐやる人」になる20の方法』のなかでイ・ミンギュ氏は書いています。ゴールにたどり着くにはどんなルートを進むのか。何を実行し、障害物にぶつかったときにはどう解決するのか。成功までのプロセスを生き生きとイメージしなければ、実践を続けることはむずかしいと言います。
ちょっと話がそれますが、プロセスにフォーカスすることの重要性は、脳外科医の林先生も『〈勝負脳〉の鍛え方』のなかでゴルフのパッディングを例に触れているので紹介します。
ゴルフのパッディングはイメージが大切だとよく言われます。パッディングはとても繊細な運動で、グリーンの傾きや芝の状態などを計算に入れつつ、小さなカップにこれまた小さなボールを入れなければなりません。ちょっとでも力んでしまったり、ボールを打つ力が足りないと、ボールは非情にもコロコロとカップを素どおりして転がっていってしまいます。
では、カップインするイメージを持てばいいのでしょうか。実はゴルフのような繊細で正確な技術が求められるスポーツでは、そのような思考は逆効果となります。イメージすべきはボールの転がり方のほうなのです。
どこからどのようにボールを打ち、ボールはどのような軌道を描いてカップインするのか。目的達成までのプロセスをイメージすることで脳がそれに合わせて自分の体を自動調整し、自然と正しい姿勢でボールを打つことができるのだそうです。
人間の脳ってなんて優秀なんでしょう。成功のためには、ゴールを達成した場面をイメージすること以上に、目的達成までのプロセスをイメージする「プロセスの視覚化」が大切なんですね。
願いをかなえるうえで大切なこと
最後に、実践を続けるうえで大切なことについて触れておきます。それは、実行力とは人や組織の資質によるものではなく「技術」だということです。
その具体的な技術は、イ・ミンギュ氏の著書『「後回し」にしない技術 「すぐやる人」になる20の方法』をご参照ください。ここではエッセンスのみご紹介したいと思います。
- 次々と成果を出して前に進んでいく人と、いつもその場にとどまっている人
- 勉強ができる人とできない人
- 夢を実現できた人とできなかった人
- 子どもの頃は秀でた才能を見せていたのに、大人になってからはパッとしない人
- 優れた企画力があるのに成果につなげることのできない組織
成功しない人や組織に欠けているたったひとつのもの。それが「実行力」だとイ・ミンギュ氏は指摘します。アイデアを行動に移し、実行するかどうか。それが1%の特別な人になるか、99%の凡人になるかのわかれ道になっているのです。
実行力は持って生まれた才能でもなんでもありません。車の運転やピアノを弾くのと同じく一種の「技術」です。実践のノウハウを学んで練習さえすれば、誰でも実行力を身につけることができます。そしてこの実行力こそが真の競争力の正体なのです。
成功するのは才能や資質に恵まれた人だけなのかと思いきや、どうやらそうではないみたいですね。ノウハウを学んで練習する。それならわたしにもできます!
あとがき
何をしてもしなくても、いつかかならず目覚めぬ朝はやってきます。それならば、その日が来るまで自分の思うとおりに生きてみたい。行きたい場所へ行き、敬愛する人たちとともに時間を過ごし生きていたい。
そんな夢のまた夢に思えるような願いも、脳やマインドについて学び、使い方のコツを身につけて実践すれば実現することができそうです。
いや、実際に実現している人がいるんですから、ほかの人にできてわたしにできないことはありません。
ただし、やみくもに行動するより、自分に自覚的になってマインドや実践の結果を自分なりに評価していく必要はありそうです。人間の現状を維持しようという力は強烈ですからね。ちゃんと無意識の手綱を握っていないと「いまいる場所」に連れ戻されかねません。
そして日本電産がかかげる三大精神「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」を心に刻んでおきましょう。この実行力は技術にすぎないことをすでに確認しました。技術ならば、習得すればいいだけです。
雨の日も風の日も、たとえ隣の住民が買ってきたドリアンの香りが部屋いっぱい充満しようとも、すぐやる、必ずやる、出来るまでやる!
さあ、参考書を読みかえして、いまから実践です。
参考書籍